もりや眼科 平成25年4月の手術実績
2013.04.30 手術実績
近視をおさえる治療 その1 点眼治療
もう4月も終わりです。花粉症がひと段落したと思ったら、今度は学校検診でひっかかった子供が来院するようになりました。よく聞かれるのが「近視を直したいのですが」とか、「近視が進まないようにするにはどうしたらいいのですか」ということです。今まであまりお勧めできる方法が無かったのですが、ここ最近いくつか治療方法が出てきたので、紹介したいと思います。(これから紹介するのは、あくまで近視の進行をやや緩徐にするだけで、今ある近視を治す治療ではありません)
近視をおさえる治療 その1 点眼治療
どこの国でも、近視の人口が増えていることが問題になっています。アメリカでは1970年には近視の割合が25%だったのですが、2000年には41%まで増えてしまいました。
近視を予防もしくは治療しようとする試みは今までたくさん行われてきましたが、あまり有用な手段はありませんでした。そのため、特に日本では民間療法が乱立しました。今でも「トレーニングで近視が治る」とか、「超音波をあてれば近視が治る」という広告を目にしますが、実際に有効だと示した論文に出会ったことはありません。
ここ数年、近視治療でいくつか成果がでている治療法が発表されたので、紹介していきたいと思います。まず一つ目は点眼治療についてです。
従来、日本では近視予防目薬で調節麻痺剤 トロピカマイド(ミドリンM)が処方されていました。これは、ピントを調節する筋肉である毛様体筋を弛緩させることで近視を和らげるというものです。
実際に点眼をすると、すぐに効果が出て、近視が少なくなります。しかし、近視の進行を抑える効果は殆どないらしく、点眼していても近視が進んでしまいます。また、点眼をやめると近視は元に戻ってしまいます。
アメリカでは双子の片方の子供にミドリンMを点眼して近視の進行が抑えられるか調べた研究がありましたが、結局近視の進行は抑えられなかったようです。このため、日本以外ではこの点眼を近視予防のために使う国はあまりありません。
アトロピン点眼液は、近視進行予防で大きな効果があるということで、沢山論文が発表されています。いくつかの論文を見ると、近視がすすむ速さは半分から3分の1程度になるようです。
先ほどのミドリンMと同じ種類の薬(抗コリン薬)ですが、効き目がとても長く、1-2週間ほど効果があります。以前は、散瞳するほどしっかり効かせないと近視を抑制できないとされていましたが、最近では、0.01%程度の超低濃度でも効果があるとされています。アトロピンは副作用の多い目薬で、瞳孔が開いたり、ピントの調節ができなくなったり、充血したり、全身の副作用も多いくすりですが、0.01%だと、そのような副作用が出にくいようです。
この治療は日本ではあまり一般的ではありませんが、アジアなどではかなり一般的になっているようで、特に台湾では殆どの眼科医が近視進行防止にアトロピンを用いているようです。当院でも低濃度アトロピン自家製剤による治療を行っておりますので、興味のある方は相談にお越し下さい。
英語の得意なかたはこれも読んでみてください
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21963266
白目にできる水ぶくれ(結膜嚢胞)
2013.04.22
一人は目の前で手を振っているのがやっと分かるくらい、白内障が進行していましたが、手術後に待合室のテレビを見て喜んでいました。綺麗に手術をすると、患者さんにすぐに喜んでもらえるのでこちらも嬉しいです。
白目にできる水ぶくれ(結膜嚢胞)
白目(結膜)に水ぶくれ(嚢胞)ができる病気があります。結膜には水を作る細胞があるのですが、間違えて結膜の中で水を作ってしまい、風船のように膨らんでしまったものです。
あまりに大きくなるとゴロゴロするので、処置をします。小さい針で穴を開けると、すぐにしぼむのですが、このようにして開けた穴はすぐ閉じてしまうので、また嚢胞ができてしまいます。
ですから、この嚢胞は十字に切って、しっかり開いてあげると再発がしにくくなります。
処置のあと、出血するのは仕方ありません。すぐに綺麗になっていきます。
目の中にはいろいろなものが入る②
2013.04.16
今日は白内障手術7件
霰粒腫切除術1件
すべて無事に終わりました。
ようやくスギ花粉が終わりに近づいています。気象庁の予報でも、花粉の量が「とても多い」から「やや多い」になりました。しかし、ヒノキにも反応する私にとってはまだまだ折り返し地点。辛い日々は続きます。
目の中にはいろいろなものが入る②
前回異物について書いたので、その続きです。
やはり、一番多いのは角膜鉄片です。ハンマーで金属を叩くと、小さな破片が飛び散るようです。入り方は主に2つのパターンがあります。
一つは、角膜にめり込むタイプ
人によってはとても痛いので、異物が入ってからすぐに来院する場合もあります。しかし、時にはあまり痛くないこともあるようで、入ってから数日して「ゴロゴロする」と言って来られる方もいらっしゃいます。
通常、異物には細菌が付着しているので、異物が原因で細菌性角膜炎になることがあります。ただし、植物(もしくは、植物の種)が目に入るよりも、鉄片が目に入るほうが細菌性角膜炎になる確率は低い感じがします。鉄は角膜に刺さったあと酸化するので、周囲が酸性になって殺菌作用が働くようです。ですから、鉄片異物を取る前よりも後の方が細菌性角膜炎になりやすいようです(だからといって異物を取らなくて良いわけではありません)。
もう一つは、上まぶたの裏にくっつくタイプ これはとても痛いので、すぐに来院します。 この異物のせいで、角膜の表面がかなり傷んでいます。角膜はとても敏感ですから痛いのです。異物をとると患者さんは何事もなかったかのようになります。 同じように、上瞼の裏に入りやすいのは洗顔料のスクラブです。滅多なことでスクラブは瞼の裏に入りませんが、1~2年に1人くらい、スクラブの異物を見かけます。一般的なスクラブは米ぬかから作られているので、診察するとビーズみたいな丸っこい物が見えます。大きさは上の写真の鉄片と同じくらいだと思います。中高生が朝9時に異物で来院すると、これが疑わしいですね。洗顔料を持ってきてもらうと解決できることがあります。 他にも、火山灰由来のスクラブ異物もあるようです。泥石鹸は今でも良くありますが、その一連で火山灰入りの洗顔料がある(あった?)ようです。下は、実際に販売されていた洗顔料のスクラブの顕微鏡写真です。 こんなに尖ったものが目に入ったら本当に危ない、というか痛そうです。消費者庁のHPで注意勧告がされていました。実際には見たことありませんが。一時宮崎に住んで、新燃岳の火山灰を浴びる生活をした私にとって、お金をだして火山灰を買って顔に塗る気がしれません。ああ痛そう。
目の中にはいろいろなものが入る①
2013.04.11
このところ、スギ花粉の飛散が終わってきたようですが、ヒノキにも反応する私にとってはまだまだ中間地点です。頑張ってしのぎたいと思います。
この1週間ほど、診療終了間際や、終了後に「物が目に入った」という患者さんが多く来ました。そこで、今回はこのテーマ。
目の中にはいろいろなものが入る①
外来をしていると、「目に○○が入った」という訴えで来院されることが良くあります。一番多いのが鉄片で、その次がコンタクトレンズです。ソフトコンタクトはとてもやわらかい素材でできているので、意外と簡単に破れます。通常は破れないように優しく扱わないといけないのですが、爪が当たると破れやすいようです。
上眼瞼をめくると、破れたソフトコンタクトがでてきました。
たまに、いくら探してもコンタクトが出てこないことがあります。その時は、おそらく破れたコンタクトがどこかに出て行ったのだと思います。たまに「目の裏にコンタクトが回り込んでないですか?」と言われますが、眼球結膜(白目)と眼瞼結膜(瞼の裏の粘膜)はつながっているので、突き当りがあります(青丸の部分)。それ以上奥にはいきません。
これを書いていて思い出したのですが、以前私がコンタクト診療所でバイトをしていたとき、下まぶたのつけまつげに死んだハエが乗っかっていたのを見たことがあります。診察用の顕微鏡で拡大したのを見たので、とても衝撃的でした。本人は気づいていなかったみたいです。