飛蚊症と網膜剥離
2014.06.16 網膜
本日は白内障手術10件を行いました。すべて無事に終わりました。最近通常の症例が少ない気がします・・
2件は多焦点眼内レンズ、1件は91歳とご高齢な方、もう1件は高度近視で、-13Dというとても強い近視でした。近視が強い方は手術が難しいことがある(水晶体の支えが弱くなっていることがある)ので、とても慎重に手術をしました。特に問題なく手術が終わりました。
飛蚊症と網膜剥離
今回は飛蚊症の話です。最近テレビで飛蚊症と網膜剥離についてやっていたらしく、「網膜剥離をチェックしてほしい」という患者さんが沢山いらっしゃいます。それもあって、今回は飛蚊症について話したいと思います。
飛蚊症とは視界に糸くずや黒い影のようなものがみえ、目を動かすのにつられて動き回るように感じる症状を言います。蚊が飛んで見えるので「飛蚊症」という名前がついています。明るい場所や白いもの、空を見たとき、疲れたときに良く見えます。多くの場合は目の病気ではないので問題ありませんが、きわめて稀に網膜剥離や糖尿病網膜症であることもあります。
網膜剥離の有病率は1年あたり1万人に一人と言われています。つまり小山では年間15人程度の患者さんが出ている計算になります。
飛蚊症を理解するためには、「硝子体」について説明する必要があります。硝子体とは、眼球内部にあるゼリー状の物質です。
上の図は若い人と老人の硝子体の違いを示したものです。眼球内部の青い部分が硝子体です。若い人は目の中いっぱいに硝子体が入っています。硝子体は年齢とともに縮んでいきます。硝子体は水晶体付近としっかりくっついているので、ある年齢になると網膜から離れます。この時に飛蚊症を自覚しやすく、網膜剥離が起きやすいのです。
上は硝子体が剥がれそうという写真です。硝子体も水もどちらも透明なので、写真では黒く示されています。その境目が白くきらっと光っています(白矢印)
上の写真は、同じ人の3か月後です。硝子体が網膜からしっかり離れました(白矢印)。こうなると、硝子体は目の中で自由に動くようになります。そうすると、ちらちらして見えるようになります。
生理的な飛蚊症自体は怖いものではありません。ただ、急に飛蚊症が増えた場合には網膜剥離の可能性もあるので、すぐに眼科に受診しましょう。
もりや眼科 平成26年5月の手術実績
2014.06.09 手術実績
角膜に傷ができたり治ったりする病気。(再発性角膜上皮びらん)
2014.06.09
本日は白内障手術10件(うち乱視用レンズ4件)
硬い白内障が多かったり強度遠視の人もいましたが、無事に手術が終わりました。
白内障が強い分、視力の伸びしろが多そうです。
角膜に傷ができたり治ったりする病気。(再発性角膜上皮びらん)
ある日、若い男性が受診してきました。
「10か月前に葉っぱで目を切ってから、ずっと痛い」と言うのです。普通、外傷の場合は数日で傷が治ることが多く、それ以上長い場合は感染症などがかかわっていていることが多いので悪化することが多いのです。そのため、10か月ずっと痛いという状態は普通ではありません。診察しても、角膜には全く傷がなくありません。また、異物が入っているわけでもありませんでした。
2か月後、やはり時々とても痛くなるということで来院しました。診察すると角膜の上皮がずるむけになっていました。この状態で診察して初めて診断できるのですが、これが「再発性角膜上皮びらん」という病気です。

↑角膜の上皮がはがれている
角膜には上皮という層と実質という層があります。上皮は実質とくっついているわけですが、外傷など一旦接着が外れると、それ以降簡単に上皮がはがれてしまう場合があります。これを再発性角膜上皮びらんといいます。上皮は再生能力がとても高く、少しの傷であれば1日で治ってしまうのです。
原因として多いのが、「木の枝でついた」「抱っこしている赤ちゃんの爪がお母さんの目に入った」「紙が目に入ってキズができた」などです。糖尿病の方も再発性角膜上皮びらんになりやすいです。
治療として、軟膏を使うこともあります。起床時は目が乾燥していて角膜と眼瞼がくっつきやすい状態になっています。就寝前に軟膏を角膜に塗布することで、角膜をつるつるにしてしまう、という治療です。ただ、軟膏だけではうまくいかないことが多々あります。その時は次の治療にうつります。
この疾患に一番効果的なのが角膜表層穿刺(ストローマルパンクチャー)という治療です。注射針の先端をまげて、角膜深くに傷ができないようにしたもので角膜の表面に細かい傷をつけていきます。角膜実質の表面が傷だらけになるのですが、これによって上皮が実質にしっかりとくっつくようになるのです。
この方は、治療後数日で痛みがなくなり、以降再発しなくなりました。角膜の中心に穿刺をすると視力障害の原因になるので、注意が必要です。
乱視について詳しくなろう2 最小錯乱円と乱視の矯正
2014.06.02 白内障
本日は白内障手術を8件、眼窩脂肪ヘルニア手術1件
無事に終わりました。ヘルニアが結構大きかったのでずいぶんすっきりしました。
乱視について詳しくなろう2 最小錯乱円について
今回は眼科の専門用語「最小錯乱円と乱視の矯正」について説明したいと思います。
普段眼科スタッフは、患者さんの視力を計測するときに、2種類のレンズを使用して視力を矯正しています。1つは近視や遠視を治す球面レンズ、もう一つは乱視を治す円柱レンズです。これらのレンズを使うとピントを合わせることができます。一般にはピントがしっかり合うと光は1つの点に集まるのですが、実際には点になることはなく、ある程度の面積をもった面に光が集まります。この円の面積が大きいと「ピントがぼけた状態」になり、小さくなると「ピントが合った状態」ということになります。この円の面積が最もちいさくしたものを「最小錯乱円」と言います。
この視力検査をするときに参考になるのが「レフ」と呼ばれる検査です。これで、どんなレンズを使うと視力がでそうなのかが大体わかります。
SPHが球面レンズ、CYLが円柱レンズの度数、Axisは乱視の角度を示しています。しかし、実際にこれらのレンズがベストとは限りません。球面レンズの度を増やした方が良かったり、乱視の度数を増やしたり減らしたり、角度を変えた方が良かったりします。
その為に良く使うのが「クロスシリンダー」です。
レンズの表裏を変えることで、乱視の角度や度数を変えることができます。これを用いることで、それぞれの人に最適な度数を調べることができます。主に成人のメガネ合わせに使います。
クロスシリンダーの使い方まで説明すると、結構なボリュームになるので今日はここまでにしたいと思います。
乱視について詳しくなろう(強主経線と弱主経線)
2014.05.26 白内障
今日は白内障手術8件
翼状片手術1件
眼瞼内反症手術1件を行いました。
白内障はかなり固くなっている人もいましたが、無事に終わりました。
乱視について詳しくなろう(強主経線と弱主経線)
患者さんに説明してもなかなか分かってもらえない乱視ですが、眼科のスタッフでも正確に理解するのはとても難しいことです。今回は、乱視についてなるべくわかりやすいように説明したいと思います。
結構昔ですが、乱視と白内障について記事を書きました。
たとえば、このように横長の眼球の場合で考えてみます。
角膜はカーブがきついほど屈折力が強いという特徴があります。赤の断面では角膜のカーブがゆるく、青の断面では角膜のカーブはきつくなります。そのため、赤の断面を通る光の焦点は、青の断面を通る光と比べて奥の方になってしまいます。
話は変わって、地球儀の話です。以前学生だったときに「経線」について習ったことがあると思いますが、覚えていますでしょうか。分かりやすくいうと北極と南極を結ぶ線の事を言います。
北極側を手前にして先ほどの眼球と比べてみましょう。すると、眼球の図で青い断面も赤い断面も経線に相当することが分かると思います。経線の中でももっともカーブが強いところ(度数の強いところ:眼球の図でいう青線)を「強主経線」、カーブが弱いところ(度数の弱いところ:眼球の図の赤線)を「弱主経線」と言うのです。
真ん中がへこんでいるレンズは凹レンズといって、レンズの度数を減らす役割があります。このレンズを強主経線の位置に合わせて置くことで、強主経線のレンズの度数を減らすことができます。一方で、弱主経線の度数はそのままにすることがでるので、結果として乱視の度数(強主経線の度数から弱主経線の度数を引いたもの)が減ります。