糖尿病網膜症で網膜に起きる変化(硬性白斑、増殖膜)
2013.06.17 網膜
本日は白内障手術を7件行いました。
皆さん無事に手術を終えました。
糖尿病網膜症で網膜に起きる変化(硬性白斑、増殖膜)
糖尿病になると、網膜の血管が傷むという話を前回しました。傷んだ血管からは、血液の成分が漏れ出てしまいます。漏れ出た成分が多くなると、体に吸収されずに網膜上に残ってしまいます。これを硬性白斑といいます。
前回お話した、軟性白斑は「現在血液が足りてませんよ」という危険なサインでした。それに対して、硬性白斑は「血管が傷んでますよ」とは言えるものの、軟性白斑ほど危険なサインではありません。そのため、硬性白斑が増えていかないかどうかを見るだけで良いと思います。
あまり悪さをしない硬性白斑ですが、たまに黄斑上にでて視力をグッと下げてしまうことがあるので注意が必要です。
糖尿病網膜症が進行した場合、血液不足で網膜が死にそうになりながらも、なんとか助かろうと網膜が自己修復を始めます。この様な活動が活発になったとき、網膜の表面に増殖膜という膜が生じます。
この膜が生じたときは、とても危ないサインです。網膜の表面に生じた増殖膜は、段々縮んでいくという性質があります。そのために、網膜剥離をひっぺがしてしまい、網膜剥離になってしまうのです。
青矢印の先が増殖膜です。増殖膜が網膜を引っ張っているので、網膜にシワが寄っています。これを見つけたら、硝子体手術をしなくてはなりません。手術で増殖膜を取ることで、網膜剥離をふせぎます。ただ、増殖膜と網膜はがっちりくっついていることも多く、手術の難易度は高いと言えます。
糖尿病網膜症で網膜に起きる変化(点状出血、軟性白斑)
2013.06.10 網膜
本日は、白内障手術 9件を行いました。
無事に手術を終えました。
糖尿病網膜症で網膜に起きる変化(点状出血、軟性白斑)
糖尿病になると、目の中の血流が悪くなります。そうすると、網膜の血管がだんだん傷んできます。
糖尿病網膜症になって、初めに生じる網膜の変化は大体の場合点状出血です。これは、網膜の血管が傷んだことにより、少量の血液が漏れ出るために生じます。ですから、これが1つでもあると、「あなたは糖尿病網膜症です」と診断されます。糖尿病がある程度悪くないと生じない変化なのです。
赤い矢印の部分が点状出血です。文字通り、点のような出血を認めます。
もっともっと網膜の血流が悪くなると、網膜が一部白っぽくなってきます。これは「今現在この部分に血液が足りてないですよ」というサインです。糖尿病網膜症がこれから悪くなっていきますよ、という事なのでレーザー治療が必要になります。
この白っぽいのが軟性白斑です。腕を強く縛ると、虚血になって白くなっていくと思いますが、それと同じようなものだと思うと分かりやすいと思います。
これは先ほどと同じ方、同じ部分で、レーザー治療をした後の写真です。赤矢印の部分の軟性白斑が無くなっています。緑の部分に少しだけ軟性白斑があります。
もう少し後の写真です。前回あった、小さな軟性白斑もなくなりました。
糖尿病網膜症という病気
2013.06.03 網膜
本日は
白内障手術 7件
すべて無事に終わりました。
糖尿病網膜症という病気
糖尿病は緑内障に次いで現在失明の原因2位の病気で、毎年3千人が失明しています。また、糖尿病網膜症による失明者は年々増加しており、眼科医にとって悩ましい疾患の一つです。糖尿病網膜症は、糖尿病の重症度とともに、糖尿病である期間が長いと生じやすい事が知られています。
糖尿病網膜症、高血圧、動脈硬化などで網膜の血管が詰まると、以下が起こります。
① 血液の流れが悪くなり、網膜に小さな出血が出現します
② 血液が流れていない部分(無血管野)に、非常に出血しやすい新生血管ができます
③ 網膜に浮腫がおこり、視力が急激に低下します
④ 新生血管から出血し、視力が急激に低下します
⑤ 網膜にかさぶたのような膜(増殖膜)ができます
⑥ 増殖膜が網膜を引き剥がします(網膜剥離)
⑦ 最終的には失明に至ります
右の眼底写真は、正常な眼底写真です。左の眼底写真は糖尿病網膜症がかなり進行した眼底写真です。進行した糖尿病網膜症に特有な新生血管、硝子体出血、増殖膜が生じています。こうなってしまうと硝子体手術が必要になりますし、視力がなかなか改善しないことになってしまいます。
7色の目の病気
2013.05.27
本日は
水晶体再建術 7件
眼瞼内反症手術1件
今日は散瞳が悪い人と内皮が少ない人、核が硬い人と難症例ばかりでしたが、無事に手術を終えました。
今回は手抜きで恐縮ですが、昔話で。
7色の目の病気
とは言っても、以前のクリスマスツリー白内障ではありません。
眼科では「○内障」という言葉がいろいろありますね。有名なのは白内障や緑内障です。
「内」は目の中を、「障」は病気の事を示しています。白内障は、水晶体が白くなるので、だれが見ても「白」だと思いますが、緑内障の「緑」の意味は分かりますか?
急性緑内障発作になると、角膜浮腫(黒目がむくむ)ので緑っぽく見えたのだそうです。英語では「グラコーマ」と言うのですが、もともとラテン語の「グラコウス」と言って、くすんだ海の色を示すそうです。ですから、緑というより青ですね。信号機の青と同じことでしょうか。ほかには、急に目の血流が途絶えて真っ暗になる「黒内障」も、まれに使うことがあります。
私は昔の話はあまり知らない方だと思うのですが、ひとつ印象に残っている本があります。眼科の秘伝書だそうです。この本によると、黄、青、赤、白、黒、血、石内障の7色の目の病気があります。殆どが不治ですね。これらのイラストの角膜径が小さいのが気になります。何の病気の事を言っているのか、殆どわかりません。
白内障は針と書いてあります。針を用いて水晶体を硝子体側に落下させるんですね。現在で手術適応の白内障だと、やわらかすぎて落下してくれないかもしれません。
先人たちは、限られた道具と技術にも関わらず、よくやっていたなと思います。
近視をおさえる治療 その3 メガネによる治療
今回は
白内障手術 13件 (うち眼内レンズ縫着術1件)
硝子体手術 4件
眼窩脂肪ヘルニア手術1件
無事に手術を終えました。
このところ手術の申し込みが増えてきた関係で、1ヶ月ほどお待ちいただくようになりました。
近視をおさえる治療 その3 メガネによる治療
今回は近視治療の最終回、メガネについて話をします。
今は学童が学校検診でひっかかって、眼科に来る時期です。そのため、眼科で検査をして、「メガネをかけるかどうか」という相談をすることになります。しかし、「近視になって、視力が〇〇になったから、メガネをかけた方がいいですね」と親にいっても頑なにメガネを作ろうとしない事が良くあります。大抵の場合「メガネを作ると近視が進むから」という理由です。また、メガネをつけたり外したりしていると近視が進むと思っている方もいます。これに関しては、いくつか報告があるのですが、まとめると
「メガネを付け外ししても近視の進行に影響がない」
「メガネを我慢してつけなくても近視の進行に影響がない」
「低矯正のメガネをしても、近視の進行を抑えないという報告もあれば、抑えるという報告もあります。ただ、近視の進行を抑えたとしても微々たるもののようです」
「過矯正のメガネの場合、近視が進行する可能性がある」
本来老人でかけるはずの遠近両用メガネに関しても、近視をおさえるという報告があります。ただ、これも効果が低いようで、3年間で0.64Dということでした。子供は調節力があるから、遠方用のレンズで近くも見てしまうのではないでしょうか。
他にも、近視を治すメガネは筑波大学をはじめいろいろなところで研究されています。しかし、今まで聞いたところによると、特殊コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)の方が効果が高いようです。今後良い結果が発表されれば、逐一報告したいと思います。
とある県のデータです。1.0未満の割合は中学校で5割、高校で7割程度になるそうです。この殆どが近視と考えると、それだけ近視で困っているひとは多いと思います。その人たちに少しでも治療ができればと思います。