平成27年2月の手術実績
2015.03.04 手術実績
黄斑前膜、黄斑円孔はいつ手術をしたらよいのか?
2015.03.02 網膜
白内障手術 10件(乱視用レンズ6件、入院1名)
全て無事におわりました。
黄斑前膜、黄斑円孔はいつ手術をしたらよいのか?
手術が適応になる病気というのは沢山ありますが、手術適応が比較的明確なものもあれば、そうでないものもあります。たとえば、網膜剥離は発症したら即手術です。それに対して白内障は厳密にいうとかなり若いころから生じていて、徐々に進行していくものですから手術適応があいまいです。車を運転する人であれば、矯正視力が0.7を下回る前に手術する必要がありますが、そうでない人はもっと視力が下がっても日常生活に不自由しないかもしれません。
黄斑前膜とは、黄斑(カメラでいうフィルムの部分)に膜がはる病気です。これが原因で視力がさがったり歪んで見えたり(変視症)することがあります。また、進行すると黄斑に穴が空くことがあります(黄斑円孔)。
黄斑前膜がかなり進行していて変視症(ゆがみ)が生じていたり、矯正視力が下がっていれば手術を進めやすいのですが、これらの程度が軽い人は「手術した方が良いかもしれないけど、しないという選択肢もあります」とか、「手術はあまり勧めませんが、希望があればできます」という事もあります。
1年ほどまえに来院した方で、「歪んで見える」と訴えた方がいらっしゃいました。OCTで黄斑の断面を撮影してみると、このような感じに。
少し膜がはっているという程度でしょうか?黄斑前膜のようです。
しかし、断面を変えてみるとこのような場所が。もう少しで黄斑円孔になりそうになっています。
所見としては手術適応なのですが、矯正視力が1.2、変視症も少しということで症状が軽いため、「手術した方が良いと思うけど、どうしましょうか?」と相談してみました。リスクやメリットについて良く説明したところ、経過を観察することになりました。
本当はマメに診ようと思っていたのですが、次回来院したのが1年後。
この時は、以前よりも見えにくくなっているようでした。矯正視力も0.7と低下。アムスラー検査を行うと図のように中心部分が見えにくくなっているようでした。
また、OCTを撮影してみると、黄斑円孔が完成していました。これは見えにくそうです。
手術を行って、一応視力は1.0まで上がっていますが、やはり中心部分の見えにくさと歪みが残っているようです。
この方は1年の間に進行してしまいましたが、一方であまり病状が進行しない人もいます。手術をしないという選択肢を選んだ場合、定期的に診察を受けるのが大事ですね。
進行した白内障がきっかけで生じる緑内障発作
本日は白内障手術12件 うち乱視用レンズ2件
無事に終わりました。
緊張の強いとおっしゃっていた方には沈静をかけたので、多少は楽に手術を受けていただけたと思います。
進行した白内障がきっかけで生じる緑内障発作
通常の白内障であれば、よっぽどでなければ手遅れというのはなくて、いつ手術しても本来の視力に戻ります。よっぽど進行した白内障の場合、白内障を細かく砕いて吸引するのに苦労することはありますが、他の眼疾患がなければ基本的に視力は上がります。
白内障も色々なタイプがあるのですが、水晶体の厚みが分厚くなっていくタイプの白内障があります。水晶体が厚くなると、目の中の水の通り道が塞がってしまい、眼圧が急上昇してしまうことがあります。これを緑内障発作と言います(以前記事にしました)。もともと眼が小さい方に生じやすい病気です。これになると、白内障になっていて見えないだけでなく、突然激しい痛みが生じてしまいます。また、眼圧が上がったまま時間が経ってしまうと、視神経が傷んでしまって失明してしまうことがあります。そうなってしまうと、いくら白内障手術をしても視力がうまく回復しません。
これは進行した白内障のために緑内障発作になった方の写真です。虹彩に穴を開けることで水の通り道を作りました。虹彩に穴を開けて緑内障発作を治療する方法については以前の記事を参照してください。
視野検査をしてみると、以下の通り。右は正常ですが、左はとても狭い範囲しか見えません。こうなると、白内障手術をしても視野が回復することはありません。
乱視も矯正できる多焦点眼内レンズによる白内障手術
2015.02.16 白内障
本日は白内障手術11件 (乱視用レンズ5件、入院2件)
すべて無事に終わりました。
乱視も矯正できる多焦点眼内レンズによる白内障手術
以前多焦点眼内レンズによる白内障手術について説明しました。
メガネの依存度が減る、というメリットがある一方で、適応を間違えて使用してしまうと患者さんの満足度が少なくなってしまうという特徴があります。
特に、乱視があると裸眼視力が出にくくなるのですが、白内障の手術を受ける人の3人に1人以上は乱視を矯正しないと視力が出にくい目をしています。以前までは乱視用多焦点眼内レンズがなかったため、乱視が強い方は多焦点眼内レンズの適応にはならなかったのですが、最近になって乱視も矯正できるタイプが出ました。
当院で使用したのは60代の方です。矯正視力は0.5でした。
こんな白内障です。反対目はすでに白内障手術済みなのですが、遠くにピントがあうタイプの単焦点眼内レンズが入っていました。本人の強い希望もあり、今回多焦点眼内レンズを使用する事になりました。
術前検査を行ったところ、角膜乱視が1.5Dあることが分かりました。1D以上の乱視は裸眼視力に影響します。そのため、乱視用のレンズを使用する事にしました。
手術前の矯正視力は0.5でした。
手術後の写真なのですが、眼内レンズが眼の中にはいっています。乱視の角度を示すマーカー(赤丸)がついているのが分かるでしょうか?ちなみに、緑の矢印の先で光っているのが多焦点レンズの表面の反射です。
手術後の乱視の度数は0.25Dととても少なくなりました。手術後1週間での裸眼視力は遠方で1.2、近方で1.0ととても良好でした。患者さんもとても喜んでいました。スーパーで買い物をしたときの値札が良く見えるようです。
この多焦点レンズは合う人(近方や遠方の裸眼視力が上がりやすそうな人、上がりにくそうな人)、満足してくれる人と、そうでない人がいます。そのあたりをしっかり見極めて使用すれば良いレンズだなと思います。
糖尿病患者の内科外来自己中断と糖尿病網膜症
2015.02.10 網膜
本日は白内障手術10件(うち、入院1件、乱視用レンズ3件、乱視多焦点1件)
無事に終わりました。
糖尿病患者の内科外来自己中断と糖尿病網膜症
糖尿病は現在失明の原因2位の病気なので、眼科にとってはとても重要な病気です。
糖尿病の方は基本的に定期検査が必要です。しかし、いくら糖尿病網膜症があったとしても、視力が下がらないと自分が重症かどうかが理解しにくく、そのため、定期検査を辞めてしまう人がいます。糖尿病が悪い人ほど、定期検査を辞める人が多い印象です。外来受診を辞めたとしても糖尿病網膜症が良くなるわけではなく、いずれ悪くなることが多いです。しかし、糖尿病で視力が下がってしまうと、そこからは医師・患者ともにとても大変です。
下の写真の方はいずれも内科・眼科の診察を自己中断したものの、視力が低下したため当院を受診した方です。上の写真は眼球内に出血がたまったもので、下の方に赤い液体がたまって水平面を作っています。下の写真2つは、何が写っているのかが分かりにくいと思いますが、眼球内に出血があるために、眼底写真がはっきり撮れない状態です。こんなにひどくなる前に何とかならなかったのか、と思います。これから治療を始めるのですが、できるだけ視機能を残していきたいところです。
視力のあるうちは、糖尿病網膜症の外来受診の重要性をいくら説明してもなかなか分かってくれないことが良くあります。そんな時にはお手紙を書いて送ったりもしています。下の写真がそれなのですが、プライバシーもあるのでぼやかしてあります。こうすると家族にも読んでもらえて、受診率が高くなります。それでも100%とはいかないのが難しいところです。