糖尿病の合併症 角膜の障害
2014.03.10
翼状片1件
結膜嚢形成術2件
無事に終わりました。一人は結膜弛緩症によって結膜下出血が毎月のように生じるという症例でした。
きっちり処置したので、再発が防げればいいですね。
遅くなりましたが、今週の記事です。
糖尿病の合併症 角膜の障害
糖尿病が目に及ぼす合併症で一番多いのは糖尿病網膜症です。しかし、糖尿病は網膜以外にも良く悪さをします。そのうちの一つが角膜の障害です。
糖尿病は全身の神経を障害しますが、角膜の知覚が障害されると角膜に傷がついても全く痛みを感じなくなってしまいます。また、本来眼の表面が乾燥すると「目が乾いた」と神経が感知して涙を出しますが、この機能が働かなくなってしまいます。結果として角膜が傷んでしまうのです。
この方は、「物が見えにくくなった」という主訴で当院を受診しました。診察してみると、角膜の皮がずるむけになっていました。本来とても痛いのですが、まったく痛みは感じなかったそうです。
フルオレセインという染色液を付けてから青色の光を当てて診察すると、角膜中央が良く染色されています。この部分には角膜の上皮が無くなっているのです。そのため、コンタクトレンズで角膜を保護して様子をみました。
数日でこの通り傷が塞がりました。角膜の知覚が低下している場合、折角傷が治っても再発することがあります。そのため、しばらくは注意深く経過をみる必要があります。また、この方は角膜中央付近で角膜上皮の障害が生じたため、視力が0.3まで落ちてしまいました。下の写真を見ると分かると思うのですが、傷が塞がっていても完全に透明になっているわけではありません。このまま再発しなければもっと傷が綺麗になって、視力が上がると思います。糖尿病は怖い病気ですね。
もりや眼科 平成26年2月の手術実績
2014.03.03 手術実績
強度近視の方の白内障手術
2014.03.03 白内障
本日は白内障手術を10件行いました。
無事に終わりました。
強度近視の方の白内障手術
約1年前の記事になるのですが、術後屈折値のお話をしました。
https:/moriyaganka.com/blog/18448677.html
大まかに言うと、手術後に遠いところを見たい方は0D(ジオプター)、近くを見たい方は大体-2Dに合わせて50cm先あたりが見えやすいようにすることが多いです。
強度近視の方(-6D以上)の場合、近くが見やすいことに慣れていることが多いので、-2Dあたりに設定することが多いです。しかし、これは両目とも手術することが前提です。強度近視の方で片目だけ白内障がある場合、どのように手術するのか、患者さんと良く話し合う必要があるのです。
・左右の目でで屈折値が2以上異なると、メガネで矯正できない(不同視)
近視を矯正する手段として、良くメガネを使用します。しかし、メガネで近視を治すと物の大きさが小さく見えてしまうのです。そのため、屈折値が左右であまりに異なってしまうと、両目で見てる物の大きさが異なってしまいます。
ただし、コンタクトレンズの場合、レンズから目がとても近い(くっついてる)ため、ある程度の近視を矯正しても、物の大きさがあまり変化しません。そのため、コンタクトに慣れている方は強度近視があっても、手術しない方にコンタクトレンズを入れるという選択肢があります。
もう一つは、両目とも手術するという方法です。片目しか白内障のない方でも、近視を強制するために両眼とも手術して近視を減らしてしまいます。これだと左右の屈折値の違いを気にする必要が無くなります。
ミドリンPアレルギー
2014.02.24
霰粒腫1件
緊張の強い方がいたのでやや時間がかかりましたが無事に終わりました。
ミドリンPアレルギー
ミドリンPというのは、眼科で良く使う点眼薬です。これは、検査や手術の時に使う薬で、瞳孔を開くという作用があります。

瞳孔というのは、上の写真で黒色の部分です。ここから眼の中に光が入ることになります。ですから、暗いところでは大きくなるし、明るいところでは小さくなります。
たとえば、白内障手術のときは、瞳孔を広くしてから手術を行います。

上の写真が瞳孔の開いた写真です。この方は白内障があるので、瞳孔の奥が真っ白になっています。
ミドリンPはこのように散瞳(瞳孔を広げる)時に使用する一般的な点眼薬です。

このような点眼薬ですが、一般的に処方されることはあまりないので多くの方は見たことが無いと思います。
点眼薬をつけてから15分くらいして徐々に瞳孔が広がって物が見えにくくなります。最終的に3時間から半日程度かけて瞳孔が元の大きさに戻っていきます。その間に手術や眼底検査を行うわけです。
殆どの場合、次の日には点眼の効果がなくなっているのですが、まれにこの点眼薬が体に合わないという方を見かけます。そのような方では、ミドリンPを点眼して数時間してから目が痒くなり、充血してきます。
散瞳検査の次の日に「痒い」「充血がひどくなった」と言って来院し、ミドリンPアレルギーだと判明することが多いです。たいていは数日で治りますが、ひどい人は1週間以上充血や痒みが続くかたもいらっしゃいます。

写真が少し暗いですが、これがミドリンPアレルギーになった方の写真です。白目が赤くなっているのがわかります。この方は白内障手術の術前検査で散瞳した時にミドリンPアレルギーと判明しました。
ミドリンPアレルギーの方は点眼後かなり辛いらしく、散瞳をしたくなくなってしまいます。その時に使うのがミドリンMです。

ミドリンPには、2種類の散瞳成分が入っているのですが(トロピカミドと塩酸フェニレフリン)、塩酸フェニレフリンがアレルギーの原因になっていることがおおいので、ミドリンMには入っていません。
そのため、ミドリンMでは点眼後に充血したり痒みがでる可能性が低いのです。
ちなみに、これは緑区のゆるきゃらの「みどりん」だそうです。

さっきの写真の方も、手術時にミドリンMを用いたところ、翌日には充血を認めませんでした。
今後もこの方が散瞳するときはミドリンMを用いることになっています。眼科で散瞳検査を行った後に充血、痒みが生じた場合は、次回外来のときに言うといいと思います。
アルカリが目に入ったら危険!
2014.02.17 もりや眼科
本日は白内障手術を9件行いました。
皆さん無事に手術を終えました。
アルカリが目に入ったら危険!
眼科をやっていると、目に○○が入った!と言って駆け込んでくる患者さんを良く診ます。多いのは破れたソフトコンタクトが目に入った人でしょうか。赤ちゃんの指が入ったという人もいました。他にも、揚げ油、殺虫剤、洗剤、洗顔料のスクラブ、火山灰が入った患者さんを診たことがあります。
その中でも、特に重症になるのがアルカリ性の物質が目に入った時です。一般的なイメージでは、酸性の物質の方が危ないイメージかもしれません。しかし、酸性の物質は眼の表面しか障害しないのに対して、アルカリ性は眼の深くに浸透してダメージを与えるため、深刻な障害を与えることがおおいのです。
先日経験した症例で、生コンクリートが目に入ってしまったという事で当院を受診しました。
結膜が充血しているだけのように見えますが、角膜を染色してみてみると下半分が染色されました。角膜上皮が障害されると染色されるようになるのです。
アルカリは角膜の組織深くに浸透しているので、来院してすぐに30分持続洗浄を行いました。本当は来院前にしっかり目を洗ってもらった方が治りが早いのですが、なかなか良く洗ってくれません。「とりあえず早く眼科に行かなきゃ!」という心理は分かるのですが・・
この方は、2日後には角膜の上皮が貼ってきて、もう一息で治りそうという感じでした。
今回はアルカリが目を強く傷害していなかったのできちんと治りそうでしたが、実際には失明してしまう方もいます。アルカリを浴びた後で結膜が白っぽくなっている場合は要注意です。結膜の血管が障害されているという事です。
このような場合は、角膜上皮を作る細胞も死滅していることが多く、角膜上皮が再生しません。そうすると、角膜表面に結膜が張り出してきて、角膜が濁ってしまいます。
目に良く入る強アルカリ性のものは、生石灰やコンクリートでしょうか。以前はグランドにひく白線の成分も強アルカリ性でしたが、子供に危ないということで現在では中性で安全なものを使用しているそうです。