新生血管緑内障
2013.01.07 緑内障
本日は白内障手術を4件行いました。どれも無事に終わりました。
乱視用眼内レンズも多く使うようになってきました。術後に乱視が減って、眼鏡なしの視力が良いととても嬉しくなります。
新生血管緑内障
今回は特殊なタイプの緑内障についての話題です。
「新生血管緑内障」は、糖尿病網膜症や、網膜静脈閉塞症など、網膜の血液の流れが悪くなる病気で生じる、重症で治りにくい緑内障です。 糖尿病で網膜の血管が傷むと、血液の流れが悪くなります。網膜は血液不足状態になると「血液が欲しい」という信号(VEGFという化学物質)を出します。VEGFによって網膜に栄養を送るために新しい血管が作られます(新生血管)。

この「新生血管」はとても破れやすい血管で、網膜出血や硝子体出血などの原因になります。また、隅角(房水の出口)をふさぐことがあり、急に眼圧を上げてしまいます。

上の写真の赤矢印のところに新生血管が出来て、隅角を詰まらせてしまいます。
新生血管緑内障では、虹彩をよく見ると血管を見ることができます。下の写真の赤丸のところです。小さい血管なので少し見にくいかもしれません。

この写真の方は、通常は20mmHg前後である眼圧が、50mmHg以上になってしまいました。このまま放っておくと直ぐに緑内障が進行してしまうので、直ちに眼圧を下げる必要があります。
眼圧を下げるために、点滴や内服薬がありますが、どれも効果は一時的なものでしかありません。隅角を塞いでいる新生血管を治さないとなかなか眼圧は下がってくれません。
レーザー治療を行うと、網膜が必要とする血液の量が減って、血液不足状態が解消されますが、効果が現れるまでに数ヵ月以上の時間がかかります。 ほんの数年前までは、直ぐに新生血管をなおす方法がなかったので、この段階で緑内障の手術を行ったりしていました。しかし、新生血管緑内障における緑内障手術の成績は他の緑内障と比較して芳しくなく、眼圧が再上昇することも良くありました。
近年開発された、「抗VEGF抗体」は分子標的薬という新薬で、新生血管の原因となっているVEGFだけをやっつけることの出来る薬です。VEGFが減ることで、新生血管も速やかに減らすことができるのです。
先ほどの新生血管の出ていたかたは、注射した翌日には新生血管がすっかりなくなっており、眼圧も15mmHgに下がっていました。最終的に新生血管が再発しないようにするためには、レーザー治療が必要ですので、後日実施しました。新生血管緑内障は重症な病気なので、なかには手術が必要な症例もありますが、この症例のように、手術をせずに治療できることも多くなりました。 小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科
今年もよろしくお願いいたします。
2013.01.04 もりや眼科
OCTによる緑内障診療
2012.12.27 緑内障
いよいよ明日で今年の診療も終わりです。
先日、ついに当院の患者番号が1000番をこしました。100番ごとにたどってみると、12月は2週間と少しで100番が過ぎていました。徐々に初診患者数が増えているようです。これからも質の良い診療を心がけますので、よろしくお願いいたします。
当ブログも今年はこれで終わりです。来年もよろしくお願いいたします。
OCTによる緑内障診療
前回の続きのお話です。OCTは網膜の厚みを数字で示すことができる器械です。
緑内障は神経が傷む病気ですから、緑内障が進行するとともに網膜が薄くなっていきます。しかし、網膜が全体的に薄くなっていくのではなくて、ある法則に従って薄くなっていきます。
上は網膜の模式図です。青矢印の視神経乳頭と言われるところから網膜の血管が出入りしていますが、それと同じように網膜の神経線維も通っています。
同じく、青矢印は視神経乳頭です。緑内障の場合はこの神経線維が痛むので、網膜が薄くなるのも神経線維毎に生じます。下の写真はOCTで撮った画像になります(右眼のデータなので、上のイラストとは左右逆になります)。
画面左上、「正常眼データベース」と書いてありますが、これは視神経乳頭周囲の網膜の厚みが正常と比べて薄くなっているかどうかを判定したものです。視神経乳頭の下方や左上の方で薄くなっているのがわかります。「Clock Hour」とあるのが、視神経乳頭周囲でそれぞれの方向での網膜の厚みを表しています。緑内障の場合、まず視神経乳頭の上方や下方から薄くなることが多いので、初期の緑内障判定に有用です。
また、図の左側(耳側)の網膜が薄くなると、黄斑と呼ばれる大事な部分が傷むことがあり、視力低下の原因になります。そのため、この部分が薄くなるかどうかは注意して診る必要があります。
緑内障では、視野が欠ける前にまず網膜が薄くなると言われています。そのため、視野異常が出ていなくてもOCTで緑内障かどうかをある程度判断することができます。 通常の診療では、緑内障の程度を調べるためにはC/D比というものを調べています。視神経乳頭の大きさと視神経乳頭の窪みの大きさを比で表したものです。 ここまで正確に記録が残っていれば、1年後や5年後、10年後と比較して、緑内障が進行しているかどうかをかなり正確に判断できると思います。 OCTを緑内障で活用するのはまだ最近始まったばかりで、現在データを集めて検証している段階ですが、以前の緑内障診療とはガラッと変わりました。
以前記事を書いたので、参考までに。https:/moriyaganka.com/blog/17581954.html
カルテにはC/D比がいくつとカルテに記載するのですが、この比率は定規やコンパスで計測したものでないため、精度に劣る感じが否めません。そのため、前回0.6だった人が今回0.7だとしても、それは急に緑内障が進行したということは言えませんでした。今回紹介したOCTは、網膜の厚みを数値化するため、網膜が薄くなっているかどうかを高い精度で調べることができます。実際に、上の写真ではC/D比(水平)0.70で、下2ケタまで表示されています。
白内障の手術はいつしたら良いのか
2012.12.20 白内障
先日乱視用眼内レンズを使用した患者さんですが、裸眼視力(メガネなし)で視力1.0がでていました。手術で良い結果がでると、とても嬉しくなります。
また、当院の白内障手術は乱視の減る「強主経線切開」を行っていますが、これも乱視が減る良い方法です。これも後ほど説明したいと思います。
白内障の手術はいつしたら良いのか
外来をしていてよく聞く質問があります。
「私はいつごろ白内障手術したら良いのでしょうか?」という質問です。同年代のご近所さんが白内障の手術をすると「私もそろそろかしら?」と思うようです。
結論から言うと、白内障の手術をするべき時期は人それぞれです。患者さんそれぞれの生活スタイル次第で必要な視力は大きく異なります。そのため、私は手術すべきかどうかは外来でよく話し合って決めています。
白内障の手術のタイミングで難しいのは、白内障が慢性疾患だということです。もちろん、急に進むタイプの白内障もあるのですが、大抵は若い頃から徐々に進行してきます。ゆっくり視力が低下した場合、自覚症状が全くないこともよくあります。視力が0.2くらいでも「よく見えている!」と言い張るかたも時々いらっしゃいます。
いつ手術をしたらいいのか、迷っている場合は視力検査の結果を参考にしても良いかもしれません。視力が1.0以上出ていれば、あまり手術は必要ないでしょう。視力が0.8より下回っていれば、正常の人よりも少し見えにくくなっていると思います。運転したり、細かい作業をする方は手術を考えても良いかもしれません。
以前紹介した、核白内障の場合、あまりに進行しすぎると手術しにくくなることがあります。超音波で核を破砕するときに必要なエネルギーが多くなるため、目の負担も大きくなります。この様な方は早めの手術を勧めることがあります。
緑内障や糖尿病網膜症など、他の目の病気を抱えている方は、白内障が検査の邪魔になってきた場合にも手術を考えて良いと思います。糖尿病網膜症では、点状出血や新生血管など、細かな変化を診察する必要があるので、あまりに白内障が進んでいると診察しにくくなってきます。また、緑内障の場合は、白内障のせいで視野検査も難しくなることがあります。緑内障の1つの形態である閉塞遇角緑内障の場合は、白内障の進行で緑内障が悪化することもあるので、早いタイミングでの手術が必要になることがあります。
目の手術は怖いと思うかもしれませんが、数分で終わる治療なので安心して手術を受けていただければと思います。小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科
OCT(光干渉断層計)について
2012.12.17 緑内障
本日は手術納めでした。
白内障手術1件
眼瞼内反症手術1件
無事に終わりました。
開業して7ヶ月ですが、徐々に小山市民にもりや眼科が浸透していることを実感します。
患者さんがお友達を連れて一緒に来ていただいたこともありましたし、
駅前を見づらそうに歩いていたら、通りがかりのひとに「もりや眼科に行きなさい」と勧めてもらったという人もいらっしゃいました。来年もさらに研鑽を積んで、地域に貢献できればと思います。
もりや眼科 平成24年 治療実績
(H24年7月~H24年12月)
・観血的手術 合計 97眼
・白内障手術 81件
・網膜硝子体手術 7件
・眼瞼(まぶた)の手術 7件
・結膜の手術 2件(翼状片)
・レーザー手術 合計 15眼
・網膜光凝固術 13件(糖尿病・網膜裂孔に対するレーザー)
・YAGレーザー 2件(後発白内障に対するレーザー)
・抗VEGF薬 硝子体注射 合計 2眼
糖尿病黄斑浮腫に対する注射(アバスチン)
来年はさらに頑張りたいと思います。
OCT(光干渉断層計)について
ここ数年で急激に眼科に普及した、OCTという装置について話したいと思います。
OCTは光を使って目の中の様子を観察する機会です。仕組みは超音波エコーと似ています。
超音波エコーの仕組みですが、プローブから超音波が出て、モノに当たって跳ね返ってくる超音波を受信します。超音波が出てから帰ってくるまでの時間を測る事でモノまでの距離が分かります。
OCTでは、モノに対して光を放ち、それが反射して帰って来るまでの時間を測ります。光は超音波と違って、透明でないものは計測できません。しかし、目は角膜・水晶体・硝子体が透明なので、眼底を検査することができるのです。OCTは超音波よりも精度や情報量が多いという特徴があります。
OCTの登場で、網膜(カメラでいうフィルム)の様子を詳細に観察することができるようになりました。
たとえば、下の写真は黄斑浮腫の患者さんです。
左下の赤丸の部分を見ると、中央部分(黄斑)がむくんで、分厚くなっているのが分かります。その上の図、青矢印をみると、分厚くなっている部分は赤や白で表示されているのが分かります。また、右上の赤矢印をみると、網膜の厚みが635μmであることも分かります。
今までの通常の診察では「黄斑が浮腫で厚くなっている」くらいしか分からなかったのが、正確に635μmむくんでいるというのが分かるのです。
ちなみに、先ほどの患者さんが次に来院した時のOCTが下の図です。
字が小さくて申し訳ありませんが、前回635μmだったのが602μmに減っています。また、左の図の白い部分(むくんで分厚くなっている部分)が少し減っていることが分かります。ここまでわずかな変化は従来の診察ではわかりませんでした。
緑内障でも、進行とともに網膜の厚みが減っていくことがわかっています。
そのため、OCTを緑内障の診療に用いることで、より詳細な診療を行えるようになってきました。次回これについてお話をしようと思います。小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科